シュレーゲルアオガエル雄の繁殖期における水田利用空間の特徴

摘要

日本的な農村景観は水田によって特徴付けられており，水田における生物の利用状況を明らかにすることは農村域における生物相の保全上重要である。 本研究では，水田環境に適応して生息，繁殖している生物群である両生類に着目し，特に水田構造がその繁殖に深く関わっていると考えられるシュレーゲルアオガエル（Rlacophorus schlegelii）を対象とし，繁殖期における水田内の利用状況をみた。 水田の構造は，畦畔に囲まれた水田区画が基本的な単位となっている。 また，潅水，排水のための水路も付随する構造物であるが，「巨］越し潅漑」では水路を欠く場合もある。水田を利用する両生類のほとhどの種は水田区画内の水域や流れの少ない水路で産卵するのに対し，シュレーゲルアオガエルは畦畔等の土中に泡状の卵塊を産み付ける独特な繁殖形態を有している。 土中に産卵するのは，楠食されやすい婿化直後の幼生を守るため，また卵塊の乾燥を防ぐためと考えられている。