動物福祉とそれに関連する環境問題に対する消費者の姿勢

摘要

動物福祉とそれに関連する環境問題への強い関心は，一世代以上の期間，大多数の人々が農畜産業から遠ざかっている裕福な社会に特徴的な現象である。 こうした社会では，農畜産業は現実を伴わない知識として残されているのみで，穀物や畜産製品生産の実際を知る者ははとhどいなくなっている。 同時に，大衆文学やメディアは，このような生産現場の現実から切り離された大衆に対し，動物のケアや福祉よりも利益を優先する商業的畜産業は動物の福祉に反すると訴えている。 メディアはこのような論説の中で，商業的畜産業により世界の飢餓問題は深刻化し，健康に有害な食品が生産され，さらには環境が破壊されていると非難している（D.Fraser，J Animal Sci.，2001，79：634～641）。 このように近代農業の直面する倫理問題はますますその困難さを増しているにもかかわらず，農業者や農畜産業分野の研究者はこうした変化に対する適切な対応を怠つてきた。疑い深く，こうした問題に関する知識のない大衆は，農畜産業関係者に対し，現代の動物生産が動物の福祉にかない，周辺環境にも配慮したものであることを明確に示すよう求めているのである。