乳牛の低カルシウム血症－心臓と消化管からのアプローチ－

摘要

乳牛の低カルシウム（Ca）血症といえば，すぐに乳熱（分娩麻痺）あるいはダウナー症候群の原因を思い起こす。 しかし，それ以外の疾患にも低Ca血症は深く関係している。 表－1は，分娩性低Ca血症と8つの周産期疾患（難産，後産停滞，子宮炎，第四胃左方変位，蹄病 饱醛`シス，乳房炎，大腸菌性乳房炎）との関連性を33農場の2，190頭のホルスタイン種乳牛について調べた結果である（表－1）。 それによると分娩性低Ca血症すなわち乳熱に罷患した乳牛では難産，後産停滞，ケトーシスおよび乳房炎の発症が著しく高くなったとある。 また，大腸菌性乳房炎や第四胃左方変位の発生も増加する傾向にあるとして，低Ca血症が周産期疾患の発生に深く関与していることを統計的に示唆している。 特に，その中でも子宮筋や消化管あるいは乳頭筋の収縮、弛緩と関連して疾患が発生していることが推測される。 よって，今回は低Ca血症と循環器および消化器疾患との関連性，特に低Ca血症が心筋や消化管の収縮、弛緩に及ぼす影響について触れ，併せて低Ca血症の予防の中の飼料中陽陰イオンバランス（DCAD）についての我々のデータも紹介したい。