F18抗原を有するEscherichia coliこよる 肥育豚の腸炎について

摘要

大腸菌症は人や家畜でしばしば遭遇 する疾病であり，腸炎，浮腫病，敗血 症などの症状を示す。豚の腸炎に関わる腸管毒素原性大腸菌（ETEC)は， 線毛抗原（F4 [K88], F5 [K99], F6 [987P], F41, F18)およぴェン テロトキシン（耐熱性のSTa， STbお よび易熱性のLT)産生能により分類 される。大腸菌症の発症は，豚の日齢と大腸 菌の線毛抗原に依存する。F5， F6， F41扰原を持つ大腸菌は，3週齢未満 の若齢子豚に症状を起こす。F4抗原 を持つ大腸菌は離乳前後の下痢の原因 となり，F18抗原を持つ大腸菌は，離 乳後（通常3週齢以降）の子豚に下痢を起こす。日齢に応じて，子豚の腸細 胞に発現する線毛特異的レセプターが 異なるため，病因になる大腸菌が異な るのである。F4およびF18抗原両方を 持つ大腸菌によつて起こる離乳後の下 痢は，子豚の脱水や消耗が激しく，高 い事故率の原因となる。特にF18抗原 を有し志賀毒素（Stx2e)産生能を持 つ大腸菌は志賀毒素産生性大腸菌 (STEC)に分類される。Stx2eは血管 傷害により血管透過性を亢進させ，全身の浮腫，運動失調，事故率の増加を 特徴とする浮腫病を引き起こす。