乳牛の第四胃変位の 予防ストラテジー

摘要

乳牛の第四胃変位（DA)の一般的な予防ゴールは， 年間の発生割合を2-5 961'以下（分娩頭数に対す る），あるいは4%以下21(経産牛頭数に対する）にす ることといわれている。筆者は，北海道中央農業共済 組合(NOSAI道央）の予防ゴールを定めるために，9 支所（南空知，空知中央，中空知.北空知，上川中央. 富良野，上川北.留萌，宗谷）におけるDAの発生割合 について調査した。調査期間は2017年4月から2019 年3月までの2年間で，カルテに第四胃整復術(左方変 位，右方変位，捻転）種別コードが記載されたものを DA発生頭数として抽出した。分娩頭数を抽出するこ とが不可能であったため，家畜共済目的の成乳牛（14 力月齢以上）として引き受けされた頭数を発生割合の 分母として使用した。NOSAI道央全体のDA発生割 合は2.7% (4,931件/18万2,328頭）で，各支所間の発生 割合は中央値2.5%で，最小1.1%から最大4.2%のバラツキがあった。以上により，NOSAI道央のDAの予 防ゴールは年間発生割合を2.5%以下（成乳牛引受頭数 に対する）にするという具体的な目標値が設定された。本稿では，DAの予防を考えるにあたって.リスク 因子と予防ストラテジーをまとめたうえで.筆者が調 査した管内2農場の発症リスクの分析結果を紹介する。DAに限らず，臨床獣医師が問題発生農場を担当 して予防対策を行ううえで，まず行わなければいけな いことは.（1)担当している農場の問題となっている疾 病発生状況を客観的（定量的）に把握することである。 さらに，（2)前年度(前月）と比べて，どれくらい増加し ているのか？あるいは，地域の同様な飼養形態をと る農場と比較してどれくらい多く発生しているのか？ を生産者に知ってもらうことである（臨床獣医師自身 も！）。獣医師と生産者が問題意識を共有することで. はじめて予防ゴールという目標値が意味を成すことと なる。