牛の慢性乳房炎に対する乾乳期分娩前治療の応用

摘要

乾乳期の分娩前乳汁を採取して乳房炎の診断を行い，その診断に基づいて分娩前治療を実施して分娩後臨床型乳房炎の発症予防効果を検討した。 また，黄色ブドウ球菌（SA）感染分房に対する新たな乾乳期治療方法も検討した。 その結果，分娩前乳汁のCMT変法診断ではアメ状乳汁が正常であり，水棟性乳汁では92.7％が陽性を示した。 分娩後10日以内の臨床型乳房炎の発症率は，水様性乳汁の無処置群では75.8％であったのに対し，水様性乳汁の治療群では15.6％であり，著明な治療効果が認められた。 SA感染分房の分娩後における臨床型乳房炎発症率は乾乳前に治療を行った群が83％であったのに対し，乾乳期に頻回治療を行った群では29％と少なかった。 以上のように，乾乳期分娩前治療は分娩後の臨床型乳房炎の発症を著しく減少させることが明らかになった。