妊娠中の牛における起立位外科手術の麻酔、疼痛管理

摘要

他の動物種と同様に，牛においても外科的処置や 検査において鎮静や麻酔がしばしば必要となる。し かしながら，牛には巨大な第一胃があることから， 牛を全身麻酔して横队位ゃ仰臥位に保定することで 鼓張，第一胃内容の逆流，および誤嚥性肺炎などの 合併症を引き起こす可能性が高いlfl'15)。このことカ气 牛の全身麻酔を他の動物種より困難なものにしてい る。一方で，牛は物理的保定に良く耐えることから， 枠場保定，鎮静剤による不動化（化学的保定)，およ び局所プロックによつて比較的安全に外科手術が遂 行されている。しカゝし，妊娠中の牛では妊娠や分娩 によつて母体に生理学的変化が生じており，さらに， 麻酔薬，鎮痛薬，および鎮静薬が胎盤を通過するこ とから，これらの薬物の母体への薬理作用に加えて 胎子への影響を考慮する必要がある4)。本稿では，妊娠中の牛における起立位外科手術の 麻酔、疼痛管理を概説する。