わが国におけるサルモネラ食中毒発生状況とその予防対策

摘要

食材流通と同じく、病原体とそれらが引き起こす感染症もグローバル化している。 一方、ヒトの感染症に対する感受性は高齢化や糖尿病などの基礎疾患をもつハイリスクグループの増加により高まっているために、食中毒事件は今なお重要な社会的課題の一つである。 厚生労働省食中毒統計をもとに、一九九三年から二〇〇七年までの主要な病因物質別食中毒事件数と患者数の年次推移を示す（図1および2）。 年々増え続けたサルモネラ食中毒は、一九九六年に患者数で、一九九九年には事件数でピークとなった。 腸炎ビブリオは、一九九九年の煮カニによる大規模食中毒事件後の二〇〇一年、食品衛生法施行規則の一部変更による生食用鮮魚介類の成分規格と公定法ができたことが奏功し、近年減少傾向にある。 逆に、カンピロバククーおよびノロウイルスによる事例数は増える傾向にあり、特に二〇〇六年はノロウイルスによる患者数が急増した。 また、原因食品に注目すると、卵類およびその加工品であった事例ではサルモネラが原因となった場合が多い（図3）。