動物の乾燥耐性を支える分子基盤を探るクマムシの乾眠の追究からこれまで未解明の耐乾燥戦略の存在が明らかに

摘要

水はほとhどの生命において体の組成上最も大きな割合を占め，代謝反応の場を提供する存在として必要不可欠である．水がなければ代謝反応が行なえず生命活動は維持できない．通常，代謝反応の停止は死を意味するが，水の欠乏に際して代謝を一時中断した待機状態で長期間耐えることができる動物種が知られている．彼らは水が利用できるようになると生命活動を再開することができる．乾燥は強力な環境ストレスであり，タンパク質の変性や脂質二重膜の破壊など，細胞に与える壊滅的な影響を考えると，乾燥耐性は特定の種が獲得した驚くべき能力といえる．このような能力をもつ動物種のうち，最近特に注目を浴びるようになってきたのがクマムシ（Phylum Tardigrada）である．