ブドウにおけるマスカット香とラプラスカ香の遺伝

摘要

生食用ブドウ育種におけるブドウの交雑実生29組合せについてマスカット香とラプラスカ香の分離を調査した．マスカット香では有香：無香の分離比は1：1，1：3，1：7，3：5，9：7，1：15，27：33，0：1となり，ラプラスカ香については1：0，1：1，1：3，1：7，3：1，3：5，1：15，1：31，0：1に分離した．これらの分離比は香りが優性補足遺伝子によって支配されていることを示す．検定に用いた29組合せのうち17組合せでは無香，マスカット香，ラプラスカ香，マスカットとラプラスカ香の混合した香りの4つの表現型に分離した．これらの組合せのうち十分な個体数の得られた13組合せでは4表現型の分離比と理論比との適合度を検定した結果，マスカット香とラプラスカ香は独立して遺伝することが判明した．香りの分離比と交雑に用いた品種の血縁関係からマスカット香とラプラスカ香に関する遺伝子型を推定し，香りの遺伝に関与する遺伝子数を推定した．その結果，マスカット香の遺伝には6個の，ラプラスカ香の遺伝には5個の優性補足遺伝子が関与していることが判明した．