MCMC法を用いたベイズ推定法に基づく複数QTLマッピング法の特徴と有効性

摘要

現在、家畜や水産動物における経済形質を支配する量的形質遺伝子座（Quantitative Trait Loci、QTL）の探索が進められている。 我々は前回のミニレビュー（三宅ら2004）において、家畜でQTLマッピングを行う際には、1）生産現場で収集された量的形質記録には様々な環境要因の影響が含まれているため、それらの環境の影響を補正すること、および、2）量的形質の発現には複数のQTLが関与しているため、複数のQTLを考慮できる方法、すなわち複数QTLマッピング法を用いることの重要性について解説した。 さらに、複数QTLマッピングを行う際には、モデル内に複数のQTLが取り込まれることで、単一のQTLのみを仮定した従来のインターバルマッピングでは考慮する必要のなかったパラメータ推定上の問題が生じる。 解決するべき問題としては、QTL間の連鎖、最適モデルの選択、複数QTLの有意性検定、QTL間相互作用のパラメータ設定などが挙げられる。そこで、複数QTLマッピング法ではこれらの諸問題を解決できるアプローチを採用する必要がある。この点で、NaritaとSasaki（2004）によって開発されたMQEM法（Multiple QTL with Epistasis Mapping法）は、実験家系ではない非近交系集団へと応用が可能なQTL間相互作用効果を含む最新の複数QTLマッピング法であり、しかも、複数qTLマッピングに付随する上述の諸問題に対処できる方法の一つである。