釧路管内における牛トロウィルスの分子疫学的解析および浸潤状況調査

摘要

近年、釗I路管内で牛トロウィルス（BToV)関与を疑う下痢症が散見され、その対策を講じるにあたってBToV 浸潤状況を調査した。平成23年2月-25年8月までの調査では、牛鼻汁319検体中3検体、糞便112検体中15検 体でBToV遺伝子が陽性となり、糞便4検体からBToVが分離された。陽性牛はすべて45日齢以下で、その多 くは他病原体と混合感染していた。分離株の分子疫学的解析より、spike (S)遺伝子前半およびhemagglitinin-esterase (HE)遺伝子に多様性を認め、管内に2系統のBToV浸潤が判明した。平成5-24年に採材した成牛 血清94検体を用いて、管内への浸潤状況を調査したところ、抗体陽性率97. 996、幾何平均抗体価（GM値）124.3 倍と高値を示し、平成5年にはすでに管内への浸潤が推察された。BToVは多種消毒薬に感受性を示し、成牛で 抗体陽性率およびGM値が高値であることから、環境の適切な清掃消毒、十分な初乳給与により、子牛のBToV 病発症コントロールが可能であると推察された。