地方政府による農業関連公共投資の展開と政府間財政関係-1990年代以降の北海道農村部町村を中心に-

摘要

本稿の課題は，農業関連公共投資における政府間財政関係の性格の変容を市町村の投資行動に焦点を当てて検討し，特に1990年代以降すすむ「地方分権」が形式的「分権」であり，「集権的性格」が一貫していることを明らかにすることである（註1）．1970年代半ば以降「公共事業化」した農業政策は，1990年代に入り景気対策やUR合意対策の影響もあり，一層その性格を強めていった．農業関連公共投資は地域の発意によるものが中心であり，従来から中央政府，都道府県，市町村の密接な連携の下に行われていたが，1990年代以降一般公共事業と同様に地方債と交付税の一体的活用，すなわち地方財政を動員することで行われるようになり，政府間財政関係は大きく変容した．現在の中央，地方財政の危機的状況を生hだ以上の投資の在り方を，財政危機を理解するためにも明らかにすることがもとめられている．