The Great Convergence: Information Technology and the New Globalization.

摘要

急速に変化し，進展するグローパリゼーシヨンに 対する理解や考え方を正したい。本書の目的は，ま さにここにある。誰もが耳にした記憶があると思わ れるアメリカの最近の話として，例えば，環太平洋 パートナーシップ（tpp)協定からの離脱，メキシ コ国境の壁の構築や，おもな貿易赤字相手国のひと つであるメキシコからの輸人に対する20パーセン 卜の関税賦課（北米自由貿易協定〔NAFTA〕があ るにもかかわらず）などの提案といった.時代に逆 行する極端な保護主義的な動きが挙げられる。 TPP協定は，高水準の自由化と幅広い分野での新 たな国際ルールの構築を目指す21世紀型地域貿易 協定としての期待も大きぐ2016年2月に署名され たものである。ところが，トランプ政権下でのアメ リカのTPP離脱を受けて.TPPは暗礁に乗り上げ てしまった。物理的な国境の壁の実現可能性はとも かく，このような保護主義的な発想は，いずれも「ア メリ力の産業の発展を促し，アメリカの労働者を守 る」ためだという。果たして，現在のグローバル経 済において，このような考え方は正しいだろうか。 答えは.Noである。「旧来のグローバリゼーシヨ ン」の考え方に依拠すれば，単純に，国境に関税等 の壁を作って国内の産業や雇用を守るという発想も ありうる。しかし，すでに「新しいグローパリゼー シヨン」の時代にある今，上記のような保護主義的 な政策は，一時的には保護効果もあるかもしれないが，かえって生産面でのマイナスの影響が大きく， 守りたい国内の産業や労働者を苦しめることになる と考えられる。