農業工学の蘇生に向けて--日本植物工場学会のコミットメント--

摘要

私が三十数年前に農業機械の勉強を始めた頃は確かに農業工学こそが食料生産を介して日本を支える最重要かつ最先端の科学技術を担う学問であった．今日でも本質的には農業工学の重要性は変わっていないように思う．少なくともこの分野で仕事をする我々はその重要性を理解しているはずである．しかし，現実には大学改組や関連の研究機関等の組織改編などがある度に農業工学不要論が持ち上がり，農業工学の勢いが削がれて行く.その重要性が理解できない聾が多すぎると嘆く暇があったら，何故そのように理解が得られないのかを考えてみるべきである．我々がもし農業工学が重要だと考えるなら，それを世間に訴えるべき，というより一般市一民を啓発するためのあらゆる努力をすべきではないか．ではどの様な方法でそれを行えばよいか，各個人がそれぞれ教育，研究，開発の場において農業工学の重要性をアピールすることは無論であるが，それだけでは不十分である．そ乙に学会の役割が一つ見えてくる．学会はその分野の学術の発展を図り学界および社会に貢献する責務がある．学会機能としての会員への情報交換の場の提供など会員サービスは会員の活動を支援して活発化するためのものと捉える必要がある.会員の中だけで完結してしまうようなサークルでは物足りない　 本学会が毎年主催するSHITAシンポジウムなどは植物工場を通じて農業工学の重要性を一般市一民にアピールしている良い例である，しかし，会員900名足らずの学会の活動には限りがある．やはり，会員増を図る必要がある．そのためには学会の存在とその魅力をアピールする必要がある．このような問題に取り組むためにはあらゆる可能性にチャレンジしなければならないと思う．学会を取り巻く環境も学術会議の改革など激変の感があり時間的余裕は僅かである．