ナシ黒かび病（新称）の発生生態と防除対策

摘要

収穫から輸送，貯蔵，販売，さらに家庭で食卓にのぼるまでの全期間にわたり発生する青果物の病害は，一般に“ポストハーベスト（市場または貯蔵）病害”と呼ばれ，生育期間中に栽培圃場で発生する病害とは発生環境や防除対策が異なるため区別して考えられている（田中，1995）。 ナシでは輪紋病，灰星病などがポストハーベスト病害として最も重要であり，品種によっては生理障害が原因と考えられる内部褐変や水ナシ（みつ症）異なども発生して問題になっている。 しかし，これらのポストハーベスト病害以外にも古くから“ボタ腐れ症”と呼ばれる果実腐敗が局部的に発生しており，ナシ産地では対策に苦慮してきた。 この果実腐敗は1940年代からすでに発生が認められており，鳥取県では1952年ごろを中心に一部地域で大発生して問題となった（鳥取農試果樹分場，1952）。