19．新潟県柏崎市荒浜地先の消波潜堤

摘要

本シリーズでは，日本海沿岸に関して，すでに4回にわたり藻場の景観模式図を紹介した。 まず，新潟県粟島地先において，南東面の地先で水深8m までホンダワラ類数種が帯状分布したが，北西の冬季風浪の影響を強く受ける西または北面の地先で水深4または6mまでイワガキ等の固着動物および小型海藻類が優占し，それ以探でノコギリモクSargassum macrocarpum C．Agardhが優占し，地形的凸部の瀬または砂がかりの礫でのみツルアラメEcklonla stolonlfera Okamuraが混生した（寺脇、新井2004）。 本州沿岸では，開放的な海岸線から突出した地形の新潟県能生町百川地先において，東向き岩盤の斜面でクロメE．kurome Okamuraが優占し，冬季風浪の影響を強く受ける西向き岩盤の斜面で多年生ホンダワラ類のノコギリモクが優占し，両斜面とも水深9mの砂面との境界域で海藻類がみられなかった（寺脇、新井2000）。 一方，能登半島によって冬季風浪の影響が遮断され海面が東に広がる富山県氷見市宇波地先において，水深7～9mで砂面からの比高が低い位置でツルアラメが優占し，砂面からの比高が高い位置でノコギリモクが優占した（寺脇、新井1999）。 さらに，日本海に位置する離島でありながら海面が南東に広がる内湾である新潟県佐渡島、真野湾の二見地先において，水深2mで，硬い砂岩上の周辺の砂面からの比高が高い位置にヨレモクS．siliquastrum（Mertens ex Turner）C．Agardhが，比高が低いとマメタワラS．piluliferum（Turner）C．Agardhが，軟らかい泥岩上にウスイロモクS．pallidum（Turner）C．Agardhが，砂礫底では海草のスゲアマモZostera caespitosa Mikiが，砂泥底ではアマモZ．marina Linnaeusが優占した（寺脇、新井2002）。 以上は，自然の海底に形成されている藻場であった。今回は，能生町百川地先に近い海域である新潟県柏崎市荒浜地先に設置された消波潜堤をつくる投石の個々について，岩礁性藻場をつくる海藻類の着生基質と見なして，観察する機会を得たので報告する。