イネ縞葉枯ウイルス抵抗性の日本型イネ品種月の光と姉妹系統に見いだされた穂いもち抵抗性の性質と家系分析

摘要

Modanに由来するイネ縞葉枯ウイルス（RSV）抵抗性を導入した日本型イネ品種月の光と姉妹系統朝の光、愛知67号は，穂いもちに対する抵抗性が強い．これら品種、系統の有するいもち病抵抗性の性質を解明する目的で，圃場試験により薫いもち抵抗性と穂いもち抵抗性の比較を行った．月の光と姉妹系統のいもち病真性抵抗性推定遺伝子型はそれぞれPii, Pia Pii, +／Pia あるので, これらに病原性のいもち病菌レース007, 037が優占する条件で検定した．その結果，これら品種、系統の椿いもち抵抗性の程度は強ないし極強に分類された．一方，葉いもち抵抗性は中ないしやや強で棟いもち抵抗性より明らかに劣った．このように，月の光と姉妹系統は，穂いもちに対して特異的に強い量的抵抗性を示し，薫いもちに対しては強度の抵抗性を示さなかった．また，愛知県長久手町と稲武町の2か所で11ヶ年にわたって穂いもち抵抗性の検定を行い，月の光の棟いもち抵抗性の安定性を検討した．月の光の棟いもち抵抗性は変異菌の出現しやすい条件下でも11ヶ年にわたり安定して発現した．家系分析の結果，月の光と姉妹系統の祖先品種では，青い空．愛知6号St．No．1，Modanの穂いもち抵抗性が強かった．これらは全てRSV抵抗性であった．また，月の光や青い空にいもち抵抗性の劣る品種を交配して育成されたRSV抵抗性の葵の風，あかね空，愛知86号祭り晴，愛知89号，星の光は穂いもち抵抗性がいずれも強かった．