事例からみる損失補償法（15)地方公共団体の長の交替による工場誘致施策の 変更を理由とする損失の填補請求

摘要

【ポイン卜】損失補償は、公共事業が実施されな かった場合にも問題になる。例えば、①事業の廃 止、変更、②事業の前提となる計画の廃止、変 更、長期間の不実施、さらには③計画の前提とな る政策の廃止、変更等が行われた場合である。公 益を増進するための公共事業の計画、実施のプロ セスでは、いったh決定された事業、計画、政策 等であっても、諸般の事情から、それらを見直す ことがむしろ公益に適うと判断される場合もあ る。その場合には、そうした適法な見直しに伴つ て生じる損失も、損失補償の対象にすることが求 められる。ここでは、どの範囲の見直しを損失補 償の対象とすべきかが問題になる。重要なこと は、それもまた公益創生システムとしての公共事 業と損失補償の問題の一環であるということであ る。このことは、事業、計画、政策等の見直しが 違法に行われた場合に国家賠償が必要になることとは別問題であることに留意すべきである。