単一ニユーロン活動からみた「心」--前頭前野と行動決定--

摘要

心を理解する芸とは，脳の機能を理解することに他ならない．20世紀後半に登場した認知科学は，実験心理学的手法を駆使しで，行動主義心理学では不可侵の領域とされていた「内的過程」（脳機能）の理解に果敢宣挑戦を始めた．この流れは，神経生理学における高次脳機能研究と合流し，システム神経科学七いう新しい領域の形成に向かいつつある．ここでは，行動決定にかかわる前頭前野機能についての筆者らの研究例を紹介する．前頭前野は，感覚情報処理と運動情報処理の間に介在する高次機能を旭う脳領域であり，この発達が複雑な環境の中での適応的な行勤を可能にすると考えられている．筆者らは，認知心理学的な課鱒をサルに学習させ，課題遂行中のサルの脳から単一ニューロン活動を記録することによって，感覚情報が適応的な行動情報へと変換されていく前頭前野内の情報処理過程の一端を明らかにしてきた．