縄文人とアイヌは人種の孤島か？

摘要

お椀を伏せたように丸く盛り上がる眉間，その下に続く深く陥凹した鼻根，そこから前方に吃立するように突びりょうき出る鼻梁。 日本列島ほぼ全域に広がる縄文人の顔面骨格に共通する形態的特徴である。 I文時代以後，日本列島にこのような特徴をもった人々を求めるとすれば，それは北海道に長く居住してきたアイヌをおいてほかはない（図1）。 　 日本石器時代人，すなわち今でいう縄文人，とアイヌとの形態的類似はすでに明治時代から知られており，東京大学の小金井良精によって，日本石器時代人＝アイヌ説が提唱された。 大正期になると日本各地から精力的に古人骨を収集した京都大学の清野謙次により，日本石器時代人〒アイヌ説が批判され，日本原人説が提唱される。 日本原人説では，日本石器時代人がアイヌと同程度に本州四国九州の日本人にも似ていることから，これは石器時代人が大陸の人々と混血したことにより本州四国九州の日本人が形成され，一方北海道では石器時代人が北方諸民族と混血したことによりアイヌが形成されたと考える。 したがって日本石器時代人は日本列島に住む人々の共通祖先であり，日本原人と呼ぶにふさわしいというものである。