甲殻類を追ってオーストラリア、ニュージーランドの沿岸をさまよう

摘要

日本列島周辺に棲息するオストラコーダ（介形虫類）を調べていると，多くの種は沖縄から台湾，フィリピンへと，その近縁種をどhどh南方にたどることができます．これは「黒潮という海流に沿って運ばれた種が分布を拡大していく過程で分散，分化していった」と説明すれば，何となく納得できます．ところが赤道を越えてインドネシアやオセアニアの海域にまで，同一種ではないかと思われるほどよく似た種類がいることはどのように説明すればよいのでしょうか．「海は続いているではないか」と簡単にかたづけてしまうわけにはいきませh．深海性または浮遊性の種ならば汎世界的な分布も理解できるのですが，浅海の底生介形虫類は生活史の中で一度も浮遊時期をもたず，また自らの行動範囲も狭く，きわめて分布固有性の強い生物なのです．