ゲノム配列情報から機能情報へ--ゲノム生物学の展望--

摘要

20世紀最後の25年間の生物研究は，遺伝子研究の時代であった．現在多くの人さが，21世紀の生物学は，さまざまな生物についてまず全ゲノムの塩基配列を決定し，そこに書き込まれている生命活動のプログラムを解読することにより，生物のもつ能力の全貌を研究するゲノム生物学の時代になるだろうと考えている．小さなゲノムをもつ微生物についてはつぎつぎと全ゲノム配列が明らかにされており，ゲノム配列からの新しい生物研究が始まっている．逆遺伝学的手法による新たな遺伝子機能の解明やさまざまな細胞機能に関与する遺伝子群のシステムとしての理解，転写レベルや翻訳レベルでの遺伝子発現の動態のグローバルな解析等，その現状を具体的に紹介する．こうしたゲノムからの実験的な生物研究と情報学的な解析が両輪となり．ゲノム配列情報に書き込まれているすべての機能情報を解読するための原理や，ゲノムと遺伝子の進化、多様化の原理が明らかになっていくであろう．