手足と肺を作る遺伝子－FGF 10

摘要

動物は，1個の受精卵が細胞分裂を繰り返して多細胞となり，やがて胚生期にかたち作りが行われる．こうして，哺乳類では出生前にはほぼ成体と同じかたち作りが完成している．とこ．ろが動物胚個体は，発生段階のそうとう後期にならないとどの動物種由来の胚かわからない．すなわち魚類も両生類も鳥類も哺乳類も，発生段階の中途まで胚体は外見上きわめてよく似ていて，とくに手足が作られ始める前の段階では，いずれも尻尾が長いオタマジャクシのようである．この後ようやく手足が生えて，魚類の胚と，両生類以上の高等動物の胚体とが外見上区別できるようになる．このように動物種を比較すれば言わずもがな，手足は生物のより進化したかたちであり，海に生きたわれわれの祖先が，上陸して生活するために必須な器官であった．