熱帯林の臭い仲--糞虫によって送粉される植物--

摘要

熱帯林では，光に乏しい林床の植物と送粉毒との共生関係は，林冠の植物よりもより特殊化する傾向がある．マレーシア、サラワク州のランピル国立公園の林床に生えるショウガ貝ランモドキ科Orchidantha inoueiは，紫色の唇弁をもつ左右相称の花を咲かせるが，その花には不快なにおいがある．調査の結果，O. inoueiは糞虫のエンマコガネをにおいによって誘引し，無報酬で送粉者として利用していることが明らかになった．これはラシモドキ科の送粉システムの初めての報告であると同時に，糞虫媒という新しい送粉システムの発見である．ショウガ目の多くは大型で美しい左右相称の花をつけ，大量の蜜を分泌してコウモリやトリ，ハチなど遠くまで花粉を運ぶ送粉巷と相利共生関係を結hでいることを考えると，ランモドキ科はショウガ目の遺物システムの進化を考えるうえで非常に興味深い分類群である．