有性生殖は進化速度を速めるか？

摘要

性とは，ややこしいものだ．まず，からだの半分の量の遺伝子をもった配偶子を生産しなければならない．そのために，減数分裂という複雑な手続きをとらねばならない．そして，自分とは異なる相手を見つけなければならない．それに対して，無性生殖は簡単である．自分の都合のよいときに，自分だけで複製を作ればそれでよい．最初の生命は無性生殖生物であった．そこで，一見不利に思われる有性生殖生物が，なぜあとから出現して広まっていけたのか，そしてなぜその後も維持されていったのか，いまだにいろいろな議論がある．要するに，まだ完全に解けていない謎なのである．このような議論の中で，性は進化速度を速めるという議論は苦からあった．それは，有性生殖によって，異なる個体のもつ遺伝子が組み換えられることにより，有利な突然変異遺伝子が一つの個体の中に集まる確率が高くなるからである（図1）．