有機塩素化合物による海洋生物の汚染

摘要

生態系にとって厄介な汚染物質として知られる有機塩素化合物は，生産や使用の場から環境に流出し，大気や水を媒体として地球規模で広がり，最終的には海洋へ到達してここが溜まり場となる．野生生物の中には異常な高濃度で有機塩素化合物を体内に蓄積しているものがあり，鯨類や鰭脚類などはその典型的な事例である．海棲哺乳類の体内には有害物質の貯蔵庫（脂肪組織）があり，授乳による母子間移行量が多く，また分解酵素系が発達していないなど，有害物質を体内に蓄積してしまう固有の生理機能や生物過程がある．海棲の高等動物でみられる特異な汚染と影響は，ヒト中心の環境観では生態系は守れないことを教えている．