人間活動と深海環境

摘要

深海における人間活動は，長い間，水圧の壁に拒まれてきた．しかし，最近になって，石油，天然ガス，メタンガスハイドレートおよび鉱物資源の開発，または二酸化炭素の貯留，放出計画など，深海をめぐる動きが活発になってきた．にもかかわらず，われわれが有する深海環境の知識はあまりにも少ない．底生生物の敦さえ充分に把握できない現状は，人間活動の影響評価を困難にしている．深海開発と環境保全の調和的関係を構築するためには，深海環境を，何のために，どhな行為から保護すべきか，を考えるべきだ．そのためには，幅広い意見を取り入れた環境理念と科学者による地道な努力が不可欠である．理念のない科学調査は迷走したあげく期待すべき成果に達しないが，科学的に裏づけのない理念は空虚な響きがするだけである．今こそ，地球環境と海洋生態系の危機を回避するため，多方面の知恵を結集してゆくべきである．