ウネンエビの胸版に付着するす藻類

摘要

初夏の水田では，優雅に背泳ぎをしている体長2Cm程度の奇妙な形をした生き物を見かけることがある．この生き物は，ホウネンエビ（Branchinella kugenumeaensis）と呼ばれる小さなエビの仲間（図1ならびに口絵4頁の1参照）であり，そのほかに，カイエビやカブトエビなどの近縁の生き物も見かけられる．しかし，エビの仲間といっても，甲殻綱ではあるが，クルマエビなどの軟甲亜綱十脚目とは異さいなり，鯉脚亜綱無甲目に属するのでミジンコ（鯉脚亜綱枝角目）と近縁な生き物である．口絵の2に見られるように，ホウネンエビでは，胸肢が鮮やかな緑色に染まっているかのように見えることがある．この状態の個体が観察される場合には，その水田に生息しているほぼ全個体のホウネンエビが同じ状態となっている．胸肢に付着する藻類の存在についての報告1）はあるが，詳細な藻類の特徴や種について言及されたものはない．ここでは，付着藻の特徴を示すと共に，その藻類とホウネンエビの関係について紹介したい．