コムギ近縁野生種の進化と多様性

摘要

コムギは，イネ，トウモロコシと並hで世界三大穀物の一つであり，われわれの普段の生活でも，パン，麺類，お菓子などの原材料としてたいへh身近な存在である．しかし，コムギとはどhな植物なのかというと，意外に知られていない．コムギは，生物学的にはオオムギなどと共に，「ムギ類」と呼ばれる一群を形成している．これらムギ類遺伝資源を使った研究は数多くあるが，育種と並hで重要な研究テーマの一つが倍数性進化である．ここでは，筆者らが最近行なった，コムギ近縁種のエギロブス属を対象とした研究の一例を紹介する．また，コムギ遺伝資源として数多くの野生種が収集、保存されているが，コムギ近縁種は日本にも分布している．日本在来の野生ムギ頬の研究例として，湿地適応性の絶滅危倶種ミズタカモジの研究を紹介する．筆者らは，このような貴重な種を含めたムギ類遺伝資源を維持し，将来の遺伝、育種学のために情報を蓄積、整理していくことを試みている．