ゲノム編集の基本原理

摘要

生物の遺伝情報は，細胞の小器官である核の中のDNAに書き込まれている。DNAの4種類の 塩基（A，G，C，T)の並び順（塩基配列）が遺伝情報であり，すべての遺伝情報はゲノムとよばれ ている。たとえば，ヒ卜の30億の塩基配列の全情報がヒ卜ゲノムである。 このゲノムを自由自在に書き換える技術がゲノム編集（Genome Editing)であり，21世紀は じめに彗星のごとく現れた1)。ゲノムの情報を書き換える技術としては，遣伝子組換え技術が 有名であるが，ゲノム編集と遺伝子組換えの違いは一体どこにあるのであろうか？ここで は，ゲノム編集の基本原理を紹介し，遺伝子組換えとの相違点と類似点を理解する。さらに， 遣伝子組換えでは困難であった高度なゲノムの書き換え（編集）によって，今後基礎研究ゃ応 用分野でどのようなことが可能になるのか，その可能性について紹介する。