連載、豚のバイオメカ＝ズム: 第6回 豚の肥育における筋と脂肪組織

摘要

肉を提供するために育てられた豚を肉豚と呼びます。肉豚の生産を、豚体内での筋組織の増加による産肉と脂肪組織が増加する肥育に分けて捉えることができますが、最近では両者を区別しないで産肉と脂肪組織の両方の増加をあわせ持つことが肥育ということになってきています。肥育はいかに速く成長させるかとともに、体内脂肪組織の蓄積と可食肉の割合を増加させ、優れた食肉を生産することにあります。肥育による肉豚の成長は、遺伝的要因に基づいていますが、栄養的要因も大きく関わっています。生まれたばかりの豚の体重はほぼ二週間で二倍の体重になり、人や他の家畜に比べ、速く成長します。その間、母豚の乳を哺乳しますが、母豚の乳は牛や人などの母乳よりも乳固形分が多く含まれ、濃い乳になっています。特に、豚の母乳のタンパク質含量は人の母乳よりも五倍ほど、脂肪含量は人や牛の乳の二倍ほど、多く含まれています。