遺伝子選抜によるコマーシャル 地鶏の発育性向上

摘要

わが国の市場に出回っている鶏肉は、一般に3つのカテゴリーに分類される。ブロイラー、地 鶏、および銘柄鶏である。ブロイラーは、市場で は、「若鶏」の表示でスーパーマーケット等に広 く出回っているものである。ブロイラーは、インテ グレーターと呼ばれる総合商社が寡占的に供 給する、短期生産を目的として作られたひなを 基に生産されるもので、飼育期間は40-50日で ある。地鶏は、「地鶏肉の日本農林規格」で定 義されたものを指し、飼育の対象となるひな鶏 の血統、飼育期間、飼育方法、飼育密度が詳 細に定められている。例えば、ひな鶏は、在来種 由来の血液百分率が「50%以上」、飼育期間 が「75日間以上」、28日齢以降「平飼い」で飼 育密度「10羽以下/m2」等が定められている。一方、銘柄鶏は、地鶏の定義には当てはまらな いがブロイラーともいえない範疇の食鶏である。たとえば、ブロイラーのひなに特別な飼料を給 与して飼育期間を長くした食鶏、ブロイラー鶏 種（白色プリマスロック、白色コ一二ッシュ）では ない外国鶏を使用する食鶏、在来種を交配し て作出しているが在来種由来の血液百分率が 50%を下回っている食鶏などが該当する。（一 社）日本食鳥協会の定義では、「わが国で飼育 し、地鶏に比べて増体に優れた肉用種といわ れるもので、通常の飼育方法（飼料内容、出荷日齢等）と異なり工夫を加えたもの」となっている。さて、ブロイラー、あるいはブロイラーのひなを もとに作出されている銘柄鶏については、海外から原種鶏（グランドペアレントストック、GPS)、 種鶏（ペアレントストツク、PS)が輸入され、それ らから増殖させたひながコマーシャル鶏となる。 真の育種素材である原原種鶏（エリートストツ ク、ES)が日本には存在しないため、輸入された ブロイラーを上回る生産効率のブロイラーを、わが国で造成しょうという動きに、直ちにはつなが らない。一方、コマーシャル地鶏のESの多くは、 県の研究所あるいは試験場で一元的に維持' 管理されているため、遺伝的改良に取り組む余 地が残されている。