小型ピロブラズマ病に対する抵抗性遺伝子を見づけるためのプロジェクト

摘要

小型ピロプラズマ病はダニが媒介するタイレリア原虫Theileria sergentiが牛の赤血球に寄生し、末梢血中の寄生率の上昇にともない発熱、貧血、黄痘および発育遅延等を引き起こす疾病である。 この原虫はわが国の牧野に広く浸潤し、特に放牧未経験の子牛を中心に酪農、肉牛産業に多大な被害をもたらしてきた。 殺ダニ剤や抗原虫剤などの衛生対策が一定の成果を上げたことと放牧頭数が全国的に減少していることから、最近ではこの疾病による被害は減少傾向にある。 しかし、これらの衛生対策のコストは全国で年間11億円余りとも算出されており、放牧管理費低減の阻害要因となっている。 また、環境汚染と食品の安全性に対する消費者の関心が高まっている現状を考えると、このような原虫病に対する抵抗性育種手法の開発は「クリーンな国内生産物」を消費者にアピールする上で今後ますます重要になっていくだろう。