小規模移動放牧増加の背景と意義

摘要

最近、休耕田や耕作放棄水田、果樹園、そして里山などを利用した肉用繁殖牛の放牧が全国的に急速に広まっている（表1）。 まず、はじめにその背景と意義を考えてみたい。 近年、耕作放棄地の面積が急速に増加している（表2）。 これは単に農政上の問題だけそして自然財産の崩壊という大きな問題にも関連する。 国民の米消費量は一貫して減少していることから、稲の生産調整が年々拡大している。 今では、水田面積の4割近くに稲以外の作物が栽培されなければならない状況である。 麦、大豆、飼料作物、野菜などの転作作物の栽培面積の伸びには限界があり、作付けされていない休耕田や耕作放棄地が増加している。 耕作地1区画の面積が狭いなどの条件が不利な土地や耕作者の高齢化により、作物栽培が年々難しくなっているところが増加している。