地域創成と畜産学の貢献

摘要

環太平洋戦略的経済連携協定（TPP)が大 筋合意され、農業においても"攻めの農林水 産業"への転換が求められている。我が国の 肉用牛生産においては、和牛の約98%を占め る黒毛和種はその霜降りという類稀な肉質を武 器に海外への輸出を一層伸ばせるよう体制が強化されるであろう。一方、地域で飼養されて いる地方特定品種と呼ばれる他の約2%の和 牛品種は、近年メディアで紹介される機会が増 え、黒毛和種と異なる肉質を持つ高級な赤身 肉としてその存在が認知されつつあるが、赤身 肉であるが故に輸入牛肉と競合すると予想され る。また、飼料価格の高止まり等で生産農家 の経営が逼迫されており、営農者の高齢化と 相まって、その存続には相当の努力が必要で ある。そのような状況の中で、実学としての畜 産学が果たす役割は非常に大きい。