黒毛和種のIARS異常症につし、て

摘要

黒毛和種の虚弱子牛症候群は新生子死を引 き起こす原因の1つであり、正常な妊娠期間に もかかわらず、生時体重が正常個体に比べて 有意に低いことが特徴である。その発症には、 様々な要因が関係すると考えられている力、種 雄牛と繁殖雌牛の家系によって発症率が異な ることなどから、遺伝的要因が関係することも疑われていた（Ogataら1999)。しかし、その 遺伝的要因はこれまでに同定されていない。こ の遺伝的要因である原因遺伝子変異を特定し、 DNAを用いた正確な診断法を確立できれば、 交配をコントロールすることが可能となり、虚 弱子牛症候群の発症を抑え、子牛損耗率を低 減させることができる。われわれは、生後3力 月以内の産子死廃率が高い種雄牛Aを見出し た（8.4% ;45/526)。種雄牛Aは、これまでに 報告された黒毛和種遺伝性疾患（バンド3欠損 症、第13因子欠損症、クローディン16欠損症、 モリブデン補酵素欠損症、Chediak-Higashi症 候群、第11因子欠損症およびマルファン症候 群様疾患）の保因牛ではないため、産子の高 死廃率には、新たな遺伝的要因が関係してい る可能性が考えられた。