耕作放棄地に放牧された 黒毛和種繁殖雌牛の活動 一エネルギー消費量と行動圏の推定一

摘要

近年、わが国では、中山間地域に多く存在 する耕作放棄地の未利用資源を有効利用し、 かつ雑草防除や獣害を軽減することを目的としたゥシの放牧が行われている。放牧を持続的 に行うには放牧牛の栄養管理が重要となるが、 耕作放棄地での放牧では、肉用繁殖雌牛が放 牧されることが多いため放牧牛の体重維持が 第一に重要視される。放牧では舎飼いの場合 と比べて家畜の活動に必要なエネルギー要求 量が増加する。特に、中山間地域の耕作放棄 地は地形の起伏が激しく、放牧牛のエネルギー 要求量の増加程度はより大きくなると考えられ るため、放牧牛のエネルギー消費量を推定する ことは放牧牛の体重維持に有益な情報となる。 一方、耕作放棄地での放牧を持続的に行うに は、放牧地の管理も重要である。放牧牛は放牧 地の植生および生態系に影響を及ぼし、とりわ け特定場所の過剰利用は、草地の裸地化、土 壌の踏み固めおよび表土流出、ふh尿の集中に よる土壌や水系の汚染といった問題を引き起こ す可能性がある。