窒素過剰の我が国農業におけるアンモニアを介した窒素フローの重要性

摘要

人口に比べて狭小な農耕地で集約的な作物生産と、輸入飼料に依存した乳肉生産を行う我が国農業において、窒素収支は輸入過剰にあり、これを反映して単位耕地面積あたりの窒素収支からみた環境リスクは高く、地下水や河川への影響が顕在化している。とりわけ家畜頭数に対する飼料畑面積の割合が小さく、集約的農業以外が成立しない本州地域ではその傾向が著しい。一方、我が国の畜産が欧米諸国と大きく異なる点の一つとして、主要な家畜糞尿処理体系が堆肥化にあることがあげられる。堆肥化では窒素成分の多くがアンモニアとして大気中に放出される。本稿では我が国の窒素負荷の現状を通覧したうえで、アンモニアを介した窒素フローの実態を推定する。