水田跡地の放牧草地化技術

摘要

昨年からの輸入飼料高騰はようやく一段落してきたが、今後も高め笹推移していくと予測されている。バイオ燃料との競合などから将来の供給不安もあり、飼料自給率向上は畜産分野にかぎらず消費者も含めた国民全体の要望といえる。つまり、加工型畜産から脱却し、資源循環型畜産への転換が求められている。こうした状況の中にあ′って、水田においても米政策改革大綱決定を受け、飼料生産基盤として利活用する場面は今後も増えていくと考えられる。田畑転換で飼料作物を栽培することは以前から行われてきたが、水田機能を維持させる飼料イネおよび飼料米の作付面積も拡がりつつある。さらに、転作田などを放牧地として草地化し、肉用繁殖牛などを放牧する「水田放牧」にも注目が集まっている（写真1）。従来、水田区画のように点在する小規模な土地を放牧地として利用することは困難とされてきた。しかしながら電気牧柵で小さな牧区を囲い、牧区間で家畜を移動放牧する「小規模移動放牧」技術（山地畜産研究チーム2006）により、水田放牧は多くの地域で普及している。肉用牛の水田放牧の頭数は、平成18年4453頭、19年6038頭、20年6519頭と増加基調で推移しており、「全国飼料増産行動会議」では、平成21年度の行動計画として、放牧経験牛確保や草地管理技術改良などの放牧推進策により、肉用牛の水田放牧頭数を7500頭に増やすことを目標にしている。