国内外における有機畜産の現状と研究動向（1）

摘要

近年，日本ではBSE騒動，0157食中毒，口蹄疫や鳥インフルエンザなどの疾病があいついで発生し，さらに家畜に投与された成長ホルモンや抗生物質のような合成化合物の残留問題など畜産物の品質と安全に関わる重大な問題が頻繁に起こっている。 その結果，多くの消費者が畜産物の安全性に疑問を持ち，より安全な畜産物へのこ－ズが急速に高まってきている。 また，畜産農家の規模拡大と専業化によって家畜生産と飼料作物生産とが乖離し，そのため農家内の資源循環が断ち切られ，家畜の糞尿が土地に還元できなくなって，畜産環境問題が深刻化している。 このような家畜生産にかかわる安全性と環境問題は，現在の畜産が抱える最も重要な検討課題となっている。 このような背景の下で，ヨーロッパ，とくにEU諸国では1990年代に有機畜産が急速に発展してきた。 さらに，ヨーロッパでは家畜の健康，福祉の面からも有機畜産への要求が高まっている。