磁性の基礎とスピンエレクトロニクスへの展開VI 6.スピン流の基本概念（その2）

摘要

すなわち，（32）式の右辺第一項である交換項は電場を必要としない平衡スピン流としてとらえることができ，この平衡スピン流も含hだものを一般化されたスピン流として解釈すると，上記のように「角運動量の連続の式」として見通しの良い形が得られることになる．少し荒っぽい言い方をすると，スピン問の交換相互作用による歳差運動は平衡スピン流をやりとりしている状態として解釈することができるのである．実際，（後述するように）スピン流演算子の期待値を評価すると，平衡状態（電場なし）においてもスピン流は存在し，そのスピンの方向ほサイトごとに隣接する局在磁気モーメント間のベクトル積の方向を向いて変化していくことが示される．これが上記の交換頓に起因するスピン流に対応していると考えてよいであろう．今回はこのことを確認するため，前回の（6）式で定義されたスピン流演算子の期待値を実際に計算してみることにする．また，外場（電場）によって誘起される非平衡スピン流についても考察を行い，次回の電流誘起スピントルクに備えることとする．なお，混乱を避けるため，章，節および式と図，参考文献には前回からの続き番号を与えることとするので，ご了解いただきたい．