無機医薬品

摘要

人類は，無磯化合物の特性を活かし，右横化合物では得られない薬理的な作用をもつ有用な無機医薬品を創製してきた．古くは，鉱物としての金属元素が疾病の治療に用いられさらに，As，Sb，Hg，Fe，Mgなどの無棟元素を含む医薬品が開発されたが，これらの初期の例は厳密な処方ではなく，その毒性や副作用のために現在では使用されなくなったものも多い．しかしながら，そこから得られた知見は，古典的な無機塩医薬品に受け継がれ，その重要性は確固たるものがある，近年，有機化学の著しい進歩により，サルファ剤（細菌の生育に必要な葉酸の合成を阻害）やペニシリン（細菌の細胞壁合成を阻害）のような作用機構の阻害薬が開発されたことにより，それらの精製法，効果，作用のメカニズム，副作用などが詳細にわかるようになった．卓越した抗がh薬の一つであるシスプラチン，リウマチ治療のために初めて経口投与された薬であるオーラノフィンは，金錯体である．ETc（CNR）_6］~+では，テクネチウムが~（99m）Tc放射線同位体としで投与されるが，この種の錯体は心筋組織に選択的に吸収され心臓の造影に優れていることが証明されている．白金，金およびテクネチウムなどの人体に必須ではないと思われる遷移金属の医学·薬学領域での新たな役割が見出されている．無磯化合物の多種多様な性質を考えると，人間の健康維持·改善へのこれらの応用の可能性は無限であり，新たな無撥医薬品開発の可能性について，幅広い領域で精力的に検討されることを期待する．