深海底鉱物資源開発と環境影響調査

摘要

開発と環境対策は，過去において，対立する関係に位置付けられてきた。 しかし1990年代以降，持続可能な開発という概念のもとで車の両輪の関係になり，今日に至っている。 本稿で概観したとおり，1970年代から行われてきた環境影響調査には技術的,制度的な蓄積があり，そこから学ぶべき教訓は多い。 その一方で，以前とは異なり，海の問題には一般市民を含めた多様なステークホルダーが関わるようになり，単純に過去の経験則では対応できないような今日的な課題も山積している。 わが国EEZ内で推進しようとしている海底熱水鉱床開発についても，突き詰めて考えると，EEZの利活用に関する合意形成のプロセスとしてとらえることができる。 こうした課題を理解し，解決してゆくためには，広い視野に立った海洋ガバナンスとそれを推進·調整する機関が重要である。