周産期に留意すべき凝固異常?先天性血栓性素因「アンチ卜ロンビン欠乏症」合併妊娠

摘要

妊娠は，胎盤性の多量のエストロゲンの影響によつ て，血管拡張や血液凝固因子の産生増加と相対的な線溶 抑制状態，および血液凝固制御タンパクであるプロティンSの産生低下などによって血液凝固活性は上昇し，腫大した子宮や安静期問の增加とともに下肢の血流も うつ滞し，生理的にも静脈血栓を形成しやすい背景を持 つ。この状況の中で，強力な先天性血栓性素因といわれるアンチトロンビン（antithrombin ： AT）欠乏症を合 併していると，高頻度に静脈血栓塞栓症（venous thromboembolism ： VTE）を発症する.特に.長期安 静ゃ血管内皮細胞障害をきたすハイリスク妊娠や手術 （帝王切開など）後に，致命的な肺血栓塞栓症をきたす こともある.