学生のための熱力学入門（1）

摘要

紀元前2千年には古代エジプトにおいて巨大などラミッドが作られ，人間の力で大きな石が切り出され，運搬され，積み上げられた．この時代に力学の実用技術が大きく発達した．それでも熱が力に変換されるという力学は，数十世紀を経過してからである．燃える火は古代には神秘なものとして祭りごとの対象にされ，神秘なものとして扱われてきたが，火がエネルギーとして力を発生するものとして理解されるようになったのは，蒸気が機械的な力を発生することが示された西暦700 年代に入ってからである．ギリシャのヘロンという学者が，蒸気で回転する玩具を考案した．図1.1に示すような想像図が残されており，現在でもりっぱな熱力学を説明するのに役立つ装置である．空洞のある金属球を回転できるように中心軸で支えて，その空洞に水を入れ，さらに軸の直角方向に曲がりのある管を付けた装置で，その球を下から火で加熱すると中の水が沸騰して蒸気となり，曲がり管より噴き出す．すると，球はその反作用で回転するという仕組みである．