耐白色はく離長寿命材料

摘要

NSKでは，軸受の長寿命化に対して，転がり疲れのメカニズムを解析し，図1に示すような長寿命化技術を確立してきた．内部起点型はく離では非金属介在物の粒度分布を制御したEP鋼，表面起点型はく離では残留オーステナイト量と硬さを制御したTF（タフ）化技術を確立してきた．近年，ベルト式無段変速機（以下B-CVT）のプーリを支持する軸受や電装補機用軸受は，軸受の使用条件の過酷化に伴い，従来の内部起点型と表面起点型はく離のパターンに分頬できない早期はく離，すなわち白色組織起点型はく離（以下白色はく離）がまれに発生するようになってきた．白色はく離はグリースによって対策を施すことが可能であり，MA7，MA8，HA1等の白色はく離防止グリースを開発し市場に展開してきた．しかしながら，B-CVT等のオイル潤滑で軸受が使用される場合には，グリースにより白色はく離を防止することが不可能である．さらに，電装補機用軸受の使用条件は，今後ますます過酷化していくことが予想され，上記のようなグリースによる対策だけでは不十分な場合もあると考えられる．そこで，白色はく離を防止する技術として，材料面から何らかの対策が望まれていたが，今までは，白色はく離のメカニズムが不明確であったため，有効な軸受材料はなかった．NSKでは，白色はく離のメカニズムが水素起因であることを明確にし，2種頬の新材料を開発した（表面硬化鋼：SHX3，完全硬化鋼：SHJ5）．本報では，白色はく離メカニズムならびに開発した新材料の特長について紹介する．