異物混入潤滑下の軸受寿命に及ぼす油膜厚さの影響 第1報：異物混入油中における玉軸受の寿命試験

摘要

歯車装置から発生した摩耗粉などの固形異物が混入している潤滑剤中で転がり軸受が使用される場合，異物のかみ込みによる軌道面の損傷を起点として破損が生じ，清浄な潤滑環境で使用される場合に比べて軸受寿命が低下することは一般に良く知られている．このような軸受寿命に及ぼす固形異物の影響を把握するための研究は以前から活発に行われてきたが，それらのほとhどが異物の性質（大きさ，材質，硬さ）や混入量と寿命の関係の把握を目的としたものである．また，異物混入油中の荷重と軸受寿命の関係に着目した寿命試験の結果も報告されている．清浄な潤滑環境下では，油膜パラメータなどで代表される油膜形成の状態が軸受寿命に影響を及ぼすことが種々報告されている．しかし，異物混入潤滑下の軸受寿命に対する油膜形成状態の影響については詳細に検討された例が見られない．本研究では，異物を混入した潤滑油中で玉軸受の寿命試験を実施し，異物混入潤滑下の軸受寿命に及ぼす油膜形成状態の影響を把握するとともに，軸受寿命に及ぼす他の影響因子と油膜形成状態の相互作用を解明する．本報では，まず，異物混入油中で実施した玉軸受の寿命試験結果を報告する．