血管拡張薬硝酸薬，ニコランジル，カルペリチド

摘要

急性心不全に対する血管拡張薬の役割は，「体 液の分布を変える」ことである.肺うつ血や急性肺水腫を伴ううつ血性心不全は，体液過剰状態(volume overload)の有無にかかわらず生じる.その 機序は，体液の胸腔内へのシフト（volume central shift)である1).これは，末梢血管(特に細動脈)の 急激かつ過剰な収縮により後負荷(afterload)が上 昇し，それに左心室が対応できなくなった状態(afterload mismatch)と，容量血管である中心静脈が 収縮することによって生じる静脈還流量の急激な上 昇により，それまで手足の血管に存在していた体液が 急激に胸腔内にシフトすることによって生じる（図1).