大脳基底核と脳幹の睡眠に対する役割

摘要

睡眠障害は基底核疾患の代表であるパーキンソン 病に高率に合併し，この疾患の前駆症状としても 頻度が高い。本章では，脳幹を中心とする睡眠-覚醒の神経機構と神経伝達物質の役割について概 説し，その仕組みに基底核はどのように関与する のか，という観点に基づいて「基底核による睡眠 調節のメカニズム」を考察した。重要なポイント は次の4点である。①基底核の出力は上行性網様 体賦活系に作用して覚醒-睡眠時の大脳皮質活動 を修飾する，②基底核は脳幹から下行する筋緊張 制御系や歩行運動誘発系に作用して.睡眠-覚醒 時の運動機能の調節に関与する。③パーキンソン 病では睡眠-覚醒の調節に重要なアセチルコリンやモノアミンニューロンがド一パミンニューロンよりも早期に変性するため，睡眠障害が運動障害 に先行する可能性がある。④レム睡眠における ドーパミンニューロンの活動亢進がレム睡眠行動 障害を誘発する可能性がある。